ワタクシ的茶碗三杯・アラカルト

食と心のつながりについて描く、イラストエッセイBLOG

しばらくブログ更新をお休みさせて戴きました。

先日、母方の祖母が他界しました。
享年92歳。最期はたくさんの花々に囲まれて
まるで眠るように安らかに旅立ってゆきました。

桜

ワタシの食の原点は「祖母の味」です。

祖母は若い頃、都内で小料理屋を営んでいました。
ワタシが生まれてしばらくしてから店を畳んでしまった
そうですが、幼い頃、祖母宅に遊びに行くと、いつも
コタツのテーブルに載せきれないほどの料理をこしらえて、
孫の到着を待っていてくれました。

「ゆうちゃん、よう来たね。お腹がすいただろ。
 さあ、手を洗ってきて食べなさい」

テーブルに並べられた料理は、和食のオンパレードです。
特に記憶に残っているのは…

里芋の煮っ転がし、ブリの照り焼き、ホウレンソウのお浸し、
ワカメと豆腐の味噌汁、けんちん汁、筑前煮、山菜そば、
ひじきと油揚げの炒り煮、ふろふき大根、出汁巻き玉子、
キュウリの漬け物、炊きたての真っ白いご飯…

子どもですから、本当はカレーライスやハンバーグといった
甘くて食べやすい料理の方が良かった。
しかし、ワタシの記憶では祖母が洋食や中華料理を作って
くれたことは一度もなく、孫に食べさせたのは、昔から
食べられ続けてきた伝統的な和食ばかりでした。
また、献立そのものは、どこでもみられる家庭料理でしたが、
記憶をたどると、面取り、飾り包丁、紅葉おろし、盛り付けに
至るまで丁寧な仕事がほどこされており、それは同時に…

「店の味」でもありました。
とりわけ、ワタシが大好きだったのは、祖母が毎年漬けてくれた

「ラッキョウ」です。

茹でたての玉子のように、ツヤツヤと真っ白に光った粒揃いの
ラッキョウ。口に入れてひとくち噛めば「カリッコリッ」とした食感。
市販品のような薬臭さもなく、後味はほんのり甘酸っぱかった。
ラッキョウが好きな子どもなんて、今時珍しいかもしれませんね。

冬のある時には、こんな会話がありました。

「お婆ちゃん、またラッキョウが食べたいよ。
 なんで今日のご飯にはなかったの」

「ゆうちゃん、まだ寒くてラッキョウの季節じゃないんだよ。
 出回るようになったら、また作ってあげるから。
 だから、もうちょっと待っていなさい」

初夏を迎える頃に、祖母はラッキョウを実家に送って
くれました。今でこそ、一年中購入できるラッキョウですが
祖母のこの言葉で、ラッキョウは初夏の食べ物だと
知ったのです。そして大事に食べればいいものを、喜んで
あっという間に食べてしまうからすぐになくなってしまい、
ワタシはまた不平不満の日々~(笑)。

またワタシがあまりにも「ラッキョウ!ラッキョウ!」と
大騒ぎするので、母が祖母にレシピを尋ねて
試行錯誤しながら漬けてくれたことがありました。
しかし、出来上がったのは…

母のラッキョウは…


全体的に薄茶色で原型をとどめていないラッキョウの数々…。


(↑子どもって残酷ですね~。後になって手間隙がかかる
 ことを知りました。お母さんごめんなさい)

…こんな話を書いていたら、ラッキョウが無性に食べたくなり、
スーパーで食品添加物少なめの商品を購入してみました。
そう。見た目は確かに似ています。

ラッキョウ

でも、やっぱり祖母のラッキョウとは明らかに違いました。

後味の酸味がキツ過ぎるのです。

気を付けて飲み込まないと、

ゴホゴホとむせてしまいます。


子どもの頃の自分がパクパクと立て続けに食べられた、ということは
飲み込んでもむせないということ。でも、それは子ども向けに甘くした
ワケではなく、両親も同じものを美味しく食べていました。

そして、驚くべきことに祖母の料理は「いつ食べても同じ味」でした。

この絶妙なサジ加減こそが祖母の料理人としての技術だったことに
ワタシはやっと気付いたのです。ワタシは漬け物未経験ですが、
母にレシピを教わって、試しに自分でラッキョウを漬けてみたいな~
と思っています。

現代人はいつの間にか「頭で食事をするように」
なってしまいました。

何を食べれば健康に良いのか、
どんなダイエット方法が有効なのか。

祖母はそんなことをしなくても、旬の食材を
取り入れた、伝統的な薄味の和食を腹八分目で
食べ続けたことで、特に大きな病気をすることもなく、
天寿を全うしました。

当たり前のことを、ただ当たり前に

やってきただけでした。


「食の記憶」は強烈です。
祖母は何も語らなかったけど、料理を通じて本当にたくさんの
ことを教えてくれました。数々の記憶は、これから先の人生で
何よりもかけがえのない財産となることでしょう。

お婆ちゃん、美味しい料理をどうもありがとう。
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テーマ:幸せになる考え方 - ジャンル:心と身体
コメント

ううう・・・
読ませていただきながら、
おばあさんの姿が見えるようです~~。

亡くなられたとは・・・。
でも、いい人生だったことでしょう、
お孫さんにそれほど喜ばれたのだから。

ゆう子さん、ちょっとさびしいでしょうが、
でも、いろいろ思い出があって、よかったわね。
お母さんにも、お悔やみ申し上げてください。
2009/03/27(金) 20:27:34 | URL | makikoko。 #- [ 編集 ]
急な訃報でした
>makikoko。 さん
祖母とはまた再会するだろうと思っていただけに…
急にいなくなってしまい、何だか淋しくなりました。
話したいこと、まだまだたくさんありました。
当時、当たり前だと思っていた祖母の料理も
今となっては懐かしく思い出されます。

祖母が天国から温かく見守ってくれるように
元気に過ごしていきたいと思います。
2009/03/27(金) 21:48:47 | URL | ゆうこ #- [ 編集 ]

”当たり前のことを、ただ当たり前にやってきただけでした。”
.....ん~。。なんて奥の深い言葉...いや、実体験から生まれたごく自然な、そしてともすればつい隅に追いやってしまいそうだけど実は本当に大切にしなければいけない事なんだろうな...と感じさせられました。(まわりくどい??)

どうもありがとうございました!!
2009/03/28(土) 00:16:52 | URL | エイ #- [ 編集 ]
コメントありがとうございます
>エイ さん
毎日を大切に生きる…ということを、
祖母に教えてもらったように思います。
今思い返せば、それは食卓にも現れていました。
これからも祖母の教えを時々思い出しながら
毎日を過ごしていきたいです。
2009/03/28(土) 09:00:41 | URL | ゆうこ #- [ 編集 ]

ええ話や....うう~~~うるうるるr~~~~
季節はかわっていくし、体調も天気も毎日変わる
そんな中でいつも同じ味をつくるのは大変ですよね。
私たちも同じ施術をするのにも、毎日の温度、湿度、患者さんの体調などなどにあわせていろんなものを変えて行きます。毎日同じものを提供するためには、それが大切なんですよね。おばあさま、ホンモノのプロだったんだなあ~と感じます。かけがえのない思い出が、味の記憶と一緒にずっと色あせずに残ってくれますね。ご冥福をお祈りします。(そんな中にも母の座右の銘が笑える~~~!)
2009/03/30(月) 19:08:38 | URL | さとび #- [ 編集 ]
子どもの頃は、祖母の料理が楽しみでした
>さとび 先生
当時はそれが当たり前だと思っていましたが
今となってはスゴイことだったんだなあ~と
しみじみ実感します。もっと、あれこれ聞いて
おけば良かったです。

そんな祖母の血を受け継いでいるはずなのですが…
母の座右の銘にはかないません(笑)。
2009/03/30(月) 23:01:37 | URL | ゆうこ #- [ 編集 ]
ご愁傷様です。。
味とかメロディは、強烈な印象を残しますよね~
そしてその味が再現できないのも。。わかります~><
ラッキョウが好きな子ども?(笑)と思いましたが、味覚が鋭かったんですよ!子どもは正直だって聞きますもの。
酸味が残らない美味しいラッキョウ~~食べたい。。
修行が終わって、お祖母さん良かったですね。
2009/03/31(火) 00:00:04 | URL | Nanako #Famlh/vQ [ 編集 ]
子ども時代の味覚って、大事ですね
>Nanako さん
日本の伝統食をちゃんと教えてもらえて
本当に良かったと思います。
祖母は波乱万丈の人生を全うしました。
お金の不安や肉体的な痛みからも解放
されて喜んでいるのではないかな~と思います。
2009/04/01(水) 09:25:14 | URL | ゆうこ #- [ 編集 ]
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